認知行動療法の問い19:アンガーマネジメントとしての認知行動療法 | 株式会社CBTメンタルサポート

質問
アンガーマネジメントについて教えてください。

回答
 怒り感情に限った話ではありませんが、認知行動療法ではさまざまな感情を扱うことができます。とはいえ、感情を自由自在にコントロールできる方法という訳ではありません。人の感情というのはコントロール困難なのです。認知行動療法では、感情を頼りに付随する認知、身体反応、行動を把握していきます。アンガーマネジメントの場合、どのような状況において怒り感情が出現しその際に考えていたことと行動を整理していくような感じです。職場でついつい部下に怒ってしまう課長Aさんを例に解説していきます。まずはAさんが普段どのように怒ってしまうのかを把握していきます。観察シートなどを活用して日々の怒りを記録してもらうのです。そうすることでAさんの怒りの法則性を発見することが可能になります。法則性を整理したところ、どうやらAさんは期日通りに資料が提出されない時に特に強く怒ってしまうことが明らかになってきました。

状況:仕事中、締め切り時刻を時計で確認した際
気分:怒り
認知:締め切りを過ぎたのに報告がないのはありえない。社会人失格。罰せられるべきだ。叱ろう
身体:全身の力み、呼吸の乱れ
行動:部下を呼びつけ大声で報告がないことを指摘する

上記のような流れになります。もう一つおさえておくポイントとして、そういった行動をとった結果何が怒ったかについても整理していきます。指摘をすることで、怒り感情が多少発散されるかもしれませんし部下が指示を一時的に守ってくれるようになるのかもしれません。Aさんの行動にどのようなメリットやデメリットがあるかを整理していきます。おそらく、短期的には何らかのメリットがあれど長期的にはデメリットがあるためカウンセリングに来られたのだと思います。だとしたら長期的デメリットとは何かについても明らかにしていく必要があります。Aさんにお話を聞いたところ、長期的には部下からの報告行動は減るばかりか、Aさんの上司に怒られて怖いとの相談があったことが明らかになりました。そこでAさんに<時が戻ったとしてその際はどのように振舞えるようになりたいですか?>とお聞きすることにしました。するとAさんは、「せめて行動は相手を委縮させないようにしたい」と答えてくれました。そこで、実際にはどのような言い方だと良いのか一緒に検討していきました。時にはロールプレイを用いて練習していきます。合わせて対策として必要なことは怒り感情をどうするかということです。冷静でない状態で練習したコミュニケーション法を試したところでうまくいく確率は少ないでしょう。例外的に怒らずに対処できたこと、怒りを鎮めることができた行動(一度トイレに行く、時間を空けるなど)を検討していきます。これらを組み合わせることで怒り感情に振り回されず部下とのコミュニケーションが改善したのであれば経過を観察していきます。

アンガーマネジメントは怒り感情を無理に押さえつけるものではありません。怒りに気づき、そこに隠された想いを整理し問題にならない形で表現する方法について検討していくことが大切になります。怒りだって大切な感情なのですから。

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