2022年10月16日
- 認知行動療法
認知行動療法の問い7:認知行動療法の動機づけを高める工夫
質問
認知行動療法において宿題や介入のモチベーションを維持するための工夫があれば知りたいです。
回答
認知行動療法の動機づけを高める方法が知りたいといった質問を多数うけます。その多くが認知行動療法を実施する際、宿題を出したのにやってきてくれないというものです。はたして宿題をやってきてくれない理由は動機づけが低いからなのでしょうか。動機づけを理由にすれば認知行動療法がうまくいかなくても仕方ないということになるのかもしれません。しかし、なんだかそれはうまくいかない理由をクライエントさんのせいにしているようで好きではありません。そもそも認知行動療法を実施するのに高い動機づけは必要なのでしょうか。世の中で仕事をしている人は全員、モチベーション高く仕事をしているでしょうか。おそらく何人かは特にモチベーションはないけれど仕事だからという理由で仕事を継続しているかもしれません。なので必ずしも動機づけが必要だとは限らないのです。日常生活に少し変化が生じる仕組みを考えることで、特に意識して努力することなく目標を達成することも可能かもしれません。
前置きはこれくらいにしておいて、まずは認知行動療法の宿題がうまくできない理由について検討していきたいと思います。1つ目はしっかりと認知行動療法とは何か、なぜ宿題をやる必要があるのかについての説明が不足していることです。時間ギリギリまでお話をお聞きし、焦ってしまい突然よくわからない宿題をだしても達成率は低下します。2つ目はクライエントさんの困りごとにフィットした宿題ではない場合です。一体その宿題をやることが自分の困りごと解決にどう役立つのか分からなくては達成率は下がります。3つ目は宿題の手間や難易度です。認知行動療法における宿題は、日常生活を送るうえで無理なく継続的に行えるものをクライエントさんと一緒に決定しましょう。4つ目は宿題をクライエントさんと協同的に決定したのではなくセラピストが提案した場合です。その場合、主体性が損なわれ達成率が下がる場合があります。
続いて、質問への回答になる動機づけの高め方について解説します。カウンセリングに来談された時点で何らかの困りごとを解消したいとの動機づけはあると思います。よほど誰かに無理やり連れてられた場合は別にして。大切になるのは、クライエントさんの困りごとが何であるかを明確にして認知行動療法がその困りごとにどのように役立てることができるかをクライエントさん自身に明確に理解してもらうことです。ただただ認知行動療法の利点を話せば良いというものではありません。双方向のやりとりを通して見通しをもってもらうのです。さらにお聞きしたエピソードの中ですでにできていることについても触れることで変化への可能性を見出します。うまくいかない自分ではなく、すでに変化しかけている自分に気づいていただくといっても良いかもしれません。最後に、宿題はセラピストではなくクライエントさん自身に出してもらうことです。そうすることで主体的に臨むことができるようになります。
終わりに
認知行動療法の動機づけを高める方法は、結局のところクライエントさんとしっかりコミュニケーションがとれているかどうかが重要であると考えています。特に認知行動療法はセラピストが知っていることを情報共有するという一方的な関係になりやすいですので二人三脚で一緒に進むよう心がけることは大切になります。