2022年09月23日
- 認知行動療法
不登校支援としての認知行動療法
これまでの臨床経験の中で不登校の生徒と保護者に関わる機会は多くありました。
不登校と一言でいってもその形態は十人十色なのです。同じように見えてもそれぞれ事情は異なってきます。なので誰にでも適用可能な方法というのは存在しないのです。ネット上ではこうすればうまくいくなど書かれた記事も多くありますが一部の人に役立つことはあるでしょうがすべての人にはあてはまりません。そもそも不登校支援のゴールはどこなのでしょうか?社会の多様化に伴い必ずしも再登校だけが解決とはいえなくなってきました。では、不登校支援はいったいどこを目指して進めていけばよいのでしょうか。今回は不登校支援における認知行動療法の役割について検討していきたいと思います。
ステップ1
児童生徒、保護者、学校教員それぞれの視点から現在の様子などについてお話を伺います。その際、それぞれの立場からの期待や想いについても詳しく聴きます。このステップを通して現在の様子についてさまざまな角度から理解することができ、それぞれが進もうとしている方向性も見えてきます。方向性というのは例えば担任教師は再登校してもらいたいと考えており、家族は学校には行ってほしいがムリもしてほしくないと考え、生徒は今は行きたくないと考えているといった感じです。家族と一括りにしましたが、家族それぞれに方向性が異なる場合もあります。この方向性に正解はありません。ただしそれぞれがバラバラの方向性のままだと衝突が生じてしまう場合があります。衝突も時には必要ですが、不登校支援においての衝突は疲弊を生じさせる場合もありますので注意が必要です。それぞれの方向性を整理しある程度同じ方向を向けるようサポートしていきます。この方向性は一度決めてしまうと変えられないものではありません。状況によって調整することも大切になってきます。ちなみに方向性をどのように整理するかについてですが、それぞれの想いを掘り下げていくことで何のためにその方向性を期待しているかを確認します。その結果、例えば「子どもの将来のため」などの意見で共通した場合にはそのために何ができるかについて関係者で考えていきます。
ステップ2
不登校の発生要因(いわゆる原因)と維持要因(不登校状態が続いている要因)となる場合があります。再登校を目的にするかしないかは別にして、発生要因と維持要因を把握することは方針を決めるうえでも大切になります。また、何らかの精神疾患が影響している場合もあるため、必要があれば医療機関への受診の検討もします。維持要因を把握する上で認知行動療法は役立ちます。生活記録表を用いて現在の生活状況を具体的に把握したり、不安や恐怖などの感情が出現した際の認知、身体反応、行動のつながりを整理することで不登校の生徒の考えや行動のクセを理解していきます。
不登校の維持要因(一例)
1.不安や恐怖などの感情に直面することに負担を感じる
2.気分の落ち込みや億劫さを感じる
3.学校に行くのがルールとして機能しなくなった
4.学校に比べて家の方が居心地が良い
5.いじめなど学校に行くことにリスクがある
6.教師や生徒との関係性が悪化した
7.勉強についていけない
8.学校にいくこと以外にやりたいことがある
9.何らかの疾患があるため
10.家の手伝いが忙しいため
などなど
ステップ3
不登校の維持要因を明らかにするのと同時に、学校に行く以外の生活に支障が出ていないか確認していきます。例えば気分が億劫で外出できない、一日中グルグルと悩んでいる、人目が気になって外出できない、家族関係がギクシャクしているなどが当てはまるかもしれません。これら情報の整理を通して学校場面に囚われない生活をしていく上での困り感を明確にしていきます。それはどのような方針を目指すにしても障壁となる場合があるからです。
ステップ4
この障壁を、小さくする、取り除く、乗り越え方を学ぶ、障壁から距離を置くなどに認知行動療法のさまざまな技法を用いて対処していきます。不安が障壁になっているのであれば、不安に対処可能な技法を用いますし、気分が落ち込んでいるのであればその状態での過ごし方を検討します。苦しみのループから生徒や家族が抜け出し、進みたい方向に進むためのサポートをおこなうのが認知行動療法です。
まとめ
簡単にではありますが、不登校支援における認知行動療法の役割についてお話しました。どなたかにこの記事がお役立てできることを願って。
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